
VOICE vol.93
有吉 絵里
Eri Ariyoshi
まずは撮影場所について詳しく教えてもらえますか?
青森、津軽海峡に面しているところです。特に最初から目指していた訳じゃないんですけど、自然と。。
にしては遠くまで行きましたね(笑)
被写体を求めて色々な所へ行ってみたんです。だけど、結局撮るものが建物とか町並みとかそういうものばっかりになってしまって。煮詰まってきたというか。そんなとき友達に「無理してそんな探さなくても、撮ってるうちに好きなものがしずくみたいに垂れてくるんじゃない?」って言われて。
なるほど。でもなんで青森なんでしょう?
きっかけは津軽半島の三厩にある「船小屋」を見に行ったことが一番最初のきっかけでした。ただ方々回って気が付いたんですが、そもそも私は東北ばかり目指していたんですね。なんでだろうと思い返してみると、生まれる前に亡くなった祖父が東北出身で、小さい頃からその祖父の話を聞かされていて。そのことが強く印象に残っていたんじゃないかと思います。あとは実際に津軽半島・下北半島の津軽海峡沿いを回ったらやっぱり心惹かれた、という感じで。
どんなところに惹かれますか?
何度か通ったのは津軽海峡沿いの僻地の漁師町で。地に足がついている感じで、満足というか、それが生活というか。
満足というか、それが生活というか。なんていうのかな。。。そこで取った魚を食べて、誰もスマホとか見ていなくて、人が繋がってるんですよ。おじいちゃんやおばあちゃんと当たり前に暮らしていて、たぶん核家族ではないと思うんですよね。みんなに聞いた訳じゃないですけど。バスの中でも普通に「あー、〇〇さん、久しぶり!」とか、電車の中でおじいちゃんと孫が将棋さしてたりとか、東京に住んでいる私からするとすごく魅力的に見えるんです。
その中でも特に「佐井村」は超超僻地でしたが、不便で孤立している分、村がまとまって見えて魅力的に感じたかもしれません。
なるほど。わかる気がします。
私が写真撮らせてくださいって言うと、同じ漁師町でも土地によっては逃げられちゃうんだけど、佐井村はみんな仕事の手を休めて付き合ってくれるんですよ。「どっからきたの?」とかお話が始まって。そういうことに魅せられて、何度も通うようになりました。
良いなぁ。のんびりしてますね。

佐井村へは車で回るかしかないそうです。あるいは船で渡るか。いずれにしても遠い。。
撮影はカメラ1台で現地をまわる感じですか?
いえ、GRとライカを持っていきます。パッと撮るのはGR、人物やしっかり撮りたい時はライカで、という感じです。あまり体力がある方ではないので、一眼レフを使っていた頃は背中を痛めてしまったりして本当に辛くて。。ライカにしてからはだいぶ楽になりましたけど、今でも旅の後半疲れてくるとGRの出番が多くなりますね(笑)
なるほど。
ところで写真をはじめたきっかけって?
元々フィルムカメラの時代から母がスマホ感覚で写真を撮る人だったり、中学では写真部だったりして、昔から写真はわりと身近にあるものだったんですね。普通に進学・就職はしたんですが、10年くらい前にグラフィックの勉強をした流れでデジタル一眼が必要になって、写真を再開しました。最初は花とか夕日とか撮っていたんですが、なんかしっくりこなくて。そんな時にたまたまエプソンで上瀧由布子さんの展示を見たら、モノクロのプリントでカッコよくて。どんなところで勉強したんだろうって調べたら「中村教室」とあったので、説明会も聞かず授業料を振り込んでました(笑)
勢いがすごい(笑)しかし上瀧さんの展示がきっかけだったんですね〜!
ありがたや〜。
上瀧さんも「ちょっと教室に貢献した!」って(笑)でも本当に当時は森山大道さんの写真とか見て、夜の街や裏の街の人物を撮るような写真に惹かれていた感じです。倉田精二さんとか。。でも憧れはするけど自分には撮れないし、、、なんて思っていた時期だったので。余計に上瀧さんの日常の写真を見て「あぁ」って思ったんですよね。まあ、結局私は日常の写真は無理だったんですけど(笑)
向き不向きもありますからね(笑)
さて最後に。今後は?展示や写真集など?
写真集よりは展示に興味がありますね。展示はぜひやってみたいので、いずれはギャラリーで発表できるように頑張りたいと思います。

アングラな世界にも興味がある有吉さん。意外でした。
聞き手:小宮山